ワイヤレスネットワーキング研究室

研究内容

群移動センシングに関する研究 

ロボット等の移動体が無線通信により情報交換を行い、知的な行動を創出し、協力しながら移動・作業を行う群移動センシングに関する研究を行っている。数多くのロボットが複雑なパターンに従って移動しても、高信頼な情報交換を実現できる無線ネットワーク制御や、ロボットが群れを形成しながら未知環境に存在する目的物を探索し、その目的地に対して必要とされる作業を行うための移動制御について検討を行っている。被災地に存在する被災者や、有毒ガス発生源の探索、特定の匂いを発する物の探索などへの応用を見据え、研究を行っている。計算機シミュレーションにより提案アルゴリズムの有効性評価を行うとともに、irobot Createやraspberry piを用いたロボットプラットフォームを構築し、提案アルゴリズムの実用性評価を行っている。右の動画は、群ロボットが未知の場所にある目的物を自律的に発見し、群れを形成しながら近づく様子を示している。
 ウェイクアップ無線に関する研究 

無線センサに代表されるIoT機器は、通信を必要としない時間帯も、通信相手から送信されるデータ要求を待ち受けるために稼働状態を維持している。このような待ち受け動作による電力消費はIoT機器のバッテリー持続時間の減少に繋がる。そこで、待機状態では無線通信用回路を含むIoT機器の主要回路を電源オフ状態(スリープ状態)とする一方、超低消費電力で動作するウェイクアップ受信機が待ち受け処理を行うことにより待機電力の削減を図るウェイクアップ無線に関する研究に取り組んでいる。これにより通信不要時のIoT機器の無駄な電力消費を大きく削減できる。今後、IoT機器の普及や多様化、機械学習に代表されるデータ処理技術の発展とともに訪れるデータ中心の世界では、大量に配置されたスリープ状態のIoT機器の中から必要なデータを保有している機器のみを選択的に起動する技術が必要になると考えている。このようなデータ指向ウェイクアップ制御により、真に必要なデータの収集のみに貴重な無線資源(周波数・エネルギー)を費やすことを目指している。
 Wi-Fi (無線LAN)の高度化に関する研究 

現在、広く普及しているWi-Fiは、安価かつ柔軟なネットワーク構築が可能である一方、アンライセンスバンド特有の電波干渉や最大送信電力制限の影響で高信頼化に課題がある。そこで、多くの分野で求められている映像伝送に注目し、ドローンのような移動体からの映像伝送や工場等金属の遮蔽や工作機械からの干渉が存在する厳しい運用環境での映像伝送を高信頼化する方式の設計、実装、実験評価に取り組んでいる。また、開発した高信頼映像伝送方式を駅ホーム監視システムや林業現場での遠隔制御に展開している。さらに、Wi-FiとIoT機器から得られる種々のセンシングデータと画像解析・機械学習により得られる情報を統合することで、周波数利用効率の改善や位置・行動情報の取得・活用を行う方式の検討を進めている。右の動画は、ドローンから送信される映像を地上に配置したWi-Fi機器に高信頼に伝送する方式の実証実験風景を示している。
  大量運動者からの生体情報収集システムに関する研究 

運動会や体育授業中の児童・生徒の熱中症予防やアスリートのトレーニング・健康管理への応用を目指し、運動中の人の身体の生体情報(心拍数、脈拍、体温等)をリアルタイムに収集する生体情報収集無線センサネットワークの研究を行っている。通信ノードを装着した運動者が移動を繰り返す環境でもデータ収集ノードへの通信経路を確実に構築できるマルチホップネットワーキング法や大量通信ノードを収容するためのマルチチャネル方式の検討を行っている。これにより、数百人規模の大量運動者からの生体情報を高信頼・低遅延・リアルタイムに収集することを目指している。右の写真は、生体情報収集に用いるバイタルセンサの試作機および実証実験風景を示している。
 
 データ集約やデータ鮮度を考慮した無線センサネットワークに関する研究 

無線センサネットワークの無線リソース利用を効率化するためには、データの集約処理や収集データの重要度・鮮度を考慮したプロトコル設計が必要となる。例えば、個々のデータの関数値(和や平均値など)を集約する場合には、無線通信路の加法性を活用し、収集・計算処理を統合できる。このような技術として、Over-the-air-computation (AirComp)と呼ばれる技術の研究に取り組んでいる。また、情報の鮮度を表す指標であるAge of Information (AoI)を考慮したデータ収集方法の検討も進めている。
 
Over-the-air-computation (AirComp)の基本概念図
上記研究テーマ以外にも、無線通信の新規応用を開拓する検討を行っている。研究の評価は、理論計算や計算機シミュレーション、実機実験を通して行っている。シミュレーションは、Matlabを用いたカスタムシミュレーションの他、NS-3やScenargie(下記リンク参照)といったネットワークシミュレータを用いて行っている。 実験は、ドローンやiRobot Create、様々な無線機の試作機およびRaspberry Pi等の組み込み機器を用いて行っている。
https://www.spacetime-eng.com